« 八雲夫妻 広場に仲良く | 記念碑建立で被爆資料を配置 »

2009.10.24

美術館「ギャラリーTOM」25周年記念展

■「手で見る」先駆者、原点に還る

 視覚障害者が彫刻を触って鑑賞できる美術館「ギャラリーTOM」(東京都渋谷区松濤)が、今年開館25周年を迎え、企画展「すべては触れることからはじまる-手で見る彫刻展」を開いている。展示されている彫刻約20点は、いずれも「ぱっと見」では味わい尽くせない作品ばかり。25周年を機会に、原点に立ち返った展示となっている。

 会場に入ってまず目に飛び込んでくるのは、直径約30センチ大の大理石の“玉”。オーストリアの彫刻家、カール・プランテル氏の作で、題名は「瞑想(めいそう)のための石」(1977)。一見、単なる球体のようだが、触ってみると、一部に背骨のような出っ張りがあり、どこか居心地の悪さが残る。

 彫刻家、堀内正和(1911~2001)の作品(1953)は、中央に穴が空いたブロンズで、鳥の頭のようにも、花瓶のようにも見て取れ、形が奇妙にねじ曲がっている。境界や表裏の区別がない「クラインの壺」に似たたたずまいがあり、曲線を追うだけで目が回るようだ。

 職員の神林覚さん(49)は「近年は設立当初と違って雑多な展覧会を企画することが多かったが、25周年なので『手で見る』という原点に返った。基本的には障害のある方に限らせてほしいが、作品に触れることで、見るだけでは気付かない彫刻の魅力に気付くことは多い」と話す。

 同館は、戦前の前衛芸術グループ「MAVO(マヴォ)」に参加していた故・村山知義の息子で児童劇作家の故・亜土(あど)と、妻の治江(はるえ)さんが設立した。視覚に障害のあった2人の息子、錬(れん)さん(故人)が「ぼくたち盲人もロダンをみる権利がある」という言葉をノートに書いたことがきっかけだったという。

 当初は視覚障害者向けのギャラリーの先駆けとして、手で触れられる戦後彫刻作品の企画展や盲学校生徒の作品展を精力的に開催。近年、公立美術館などで同様の取り組みが広がる基盤を作ってきた。

 同館では現在、葛飾北斎の浮世絵を触って鑑賞できる視覚障害者向けの本の制作を計画しているという。神林さんは「(館の趣旨が)一般に広まったことでギャラリーの社会的な意義は薄れてきたかもしれないが、今後も原点を忘れずに活動していければ」と語っている。(三品貴志)

トラックバック URL

コメント & トラックバック

コメントとトラックバックはありません。

RSSフィード(コメント)

コメント